インプラント

インプラント治療後のメンテナンスは何をするの?

インプラント治療後のメンテナンスは何をするの?

カトレア歯科・美容クリニック 歯科医師 辻 和志

インプラント手術が成功し、しっかりと噛めるようになった後は、インプラントを長く使えるようにするためのメンテナンス(定期健診)が大変重要になります。メンテナンスには歯科医院で行うものとご自宅で行うものがあります。どういうことをするのかご説明します。

インプラントのメンテナンスの内容

インプラントを長期にわたって維持するためには、治療後の定期的なメンテナンスが非常に重要です。上部構造を取り付けた後は、通常は3ヶ月に1回位のペースで定期検診を受けていただきます。

定期検診では視診・触診・プローブという器具を用いた歯周ポケットの深さの測定(プロービング)を行ってインプラントの周囲だけでなく口腔全体の状態を注意深く観察します。インプラントの状態を診るために、必要に応じてX線検査を行うこともあります。

メンテナンスで重点的にチェックする点

  • プラーク(歯垢)や歯石の有無と程度
  • インプラント周辺粘膜に炎症による腫れがないか
  • 周辺粘膜に退縮がないか
  • 噛み合わせ
  • プロービング時に出血または膿が出ないか
  • インプラント体周囲に骨吸収がないか
  • インプラント体周囲に痛みはないか
  • 上部構造の破損、スクリューの緩み、インプラントの動揺がないか

インプラントのメンテナンスで特に重要なこと

インプラント患者さんのメンテナンスで特に重要なことは、インプラント周囲粘膜炎・インプラント周囲炎の兆候や症状を絶対に見逃さないことです。

健康な歯茎の場合は、プロービング時に出血したり、膿が出たりということはありません。インプラント周囲の組織に問題がなく、インプラントの状態が安定していると見なされます。

出血は軽い歯茎の炎症で起こり得ますが、膿が出る場合はかなり炎症がすすんでいることが考えられますので、直ちに歯科医師、歯科衛生士の指導のもとに歯茎の治療を会すする必要があります。

メンテナンスの費用

  • 所要時間・・40分~1時間程度
  • 頻度・・3~4ヶ月に1回
  • 費用・・保険適用で3,000円程度

※レントゲン撮影やスクリューを外しての清掃を行う場合は時間・費用とももう少しかかります。

歯のクリーニング

検診後、歯科衛生士が歯のクリーニングを行います。当院では主にエアフローという器械を使い、エリスリトールという糖アルコールを原料としたパウダーと水流を使って歯の汚れや歯垢、バイオフィルムを除去し、インプラント体の周囲及び口腔全体のクリーニングをします。

日常のセルフケア

インプラントを長持ちさせるには、毎日の口腔ケアがきちんと行われることが何よりも大切です。正しい歯磨きのポイント上げておきましょう。

起床時、就寝前に歯を磨く

お口の中は細菌にとって温度、湿度共に快適な棲み家です。細菌が好むのは37度前後の温度で、唾液という水分と食べかすの栄養分があります。

口腔内の細菌には善玉菌と悪玉菌があり、唾液1ミリリットルにはおよそ1億個もの細菌が含まれています。

歯磨きで口腔内の細菌の数をできるだけ減らしてから就寝し、起床時は就寝中に繁殖した細菌を洗い流しましょう。

毎食後、なるべく早く歯を磨く

食事をしてそのまま放置しておくと、口の中の食べかすに含まれる糖分が細菌の餌となり、ネバネバしたものを作り出します。

ネバネバした塊を歯垢(プラーク)といい、この中には細菌がたくさん含まれています。歯垢の中には虫歯の原因菌といわれるミュータンス菌や、歯周病の原因となる菌も含まれています。

細菌が繁殖するのを抑えて虫歯や歯周病を予防し、歯を守るためには、食後の歯磨きをすることが大切です。

仕事の事情などで毎食後の歯磨きが難しい方には、市販のクロルヘキシジン配合の口腔洗浄液でのうがいをお勧めします。

歯ブラシなどの口腔清掃補助用具を使う

インプラントで磨き残しが出やすいのは、上部構造と隣の歯の間、連結した上部構造同士の間、上部構造と歯肉の間の隙間などです。この隙間に歯垢が溜まりやすく、歯垢をそのままにしておくと歯茎が細菌による炎症を起こし、インプラント周囲炎の原因になります。

そのためインプラント治療を受けた患者さんにとっては、これらの部分の清掃がとても大切です。歯間ブラシ、デンタルフロス、ワンタフトブラシなどの補助用具はインプラント治療後の歯磨きには欠かせないもので、インプラント患者さん以外のすべての方にも使用をお勧めしたいです。

これらを使用すると磨き残しがかなり減り、歯垢を染める薬を使った時にあまり染まらなくなります。

歯間ブラシ

歯と歯の隙間用の小さな歯ブラシで、歯ブラシだけでは落とせない上部構造と隣の歯、連結した上部構造の間の汚れを清掃します。

デンタルフロス

歯と歯の間を清掃する糸状のもので、上部構造と隣の歯の間や上部構造と歯肉の間に通してこすることで歯垢を除去します。

ワンタフトブラシ

ワンタフトブラシとは毛束が1つに小さくまとまったブラシで、通常の歯ブラシでは取りにくい歯茎に近い部分や、段差がある部分の歯垢を、ピンポイントで除去することができます。

歯垢染色剤を使って磨き残しをチェックする

歯垢染色剤は歯に残っている歯垢を赤く染め出してくれる薬です。当院ではエアフローでの歯のクリーニングの前に必ず使用します。ご家庭でも時々使っていただくことで、磨き残しを確認できます。

歯垢染色剤を使用すると、ご自身の磨き残しの癖や、丁寧にブラッシングしても歯垢が落ちにくい場所がわかりますので、いつも着色されている部分は重点的に磨くようにしましょう。

使用した歯ブラシにも細菌がついていますので、丁寧に水洗いして乾燥させておきましょう。

インプラント治療後のメンテナンスに関するQ&A

インプラント治療後のメンテナンスの重要性は何ですか?

インプラント治療後のメンテナンスは、インプラントの長期的な健康と機能を維持するために重要です。メンテナンスは、問題が早期に発見・治療され、インプラントが正常に機能し続けることを保証します。

インプラントのメンテナンスで特に注意するべき点は何ですか?

メンテナンスでは、プラークや歯石の有無、インプラント周辺粘膜の炎症や退縮、噛み合わせ、プロービング時の出血や膿の有無、インプラント体周囲の骨吸収、痛み、上部構造の破損やスクリューの緩み、インプラントの動きなどに注意します。

インプラントを長持ちさせるには何が大切ですか?

インプラントを長持ちさせるには、歯磨きなどの毎日の口腔ケアが何よりも大切です。

インプラントで磨き残しが出やすい部分はどこですか?

インプラントで磨き残しが出やすい部分は、上部構造と隣の歯の間、連結した上部構造同士の間、上部構造と歯肉の間の隙間です。

歯間ブラシやデンタルフロスなどの口腔清掃補助用具の使用はなぜ重要ですか?

歯間ブラシやデンタルフロス等の補助用具を使用することで、磨き残しを減らし、歯垢を除去することができ、虫歯や歯周病(インプラントの場合は周囲炎)の予防に繋がります。

まとめ

定期健診

インプラント治療後にインプラントが何年もつかは、メンテナンスがきちんと出来ているかどうかで決まるといっても過言ではありません。

メンテナンスには歯科医院で行う定期健診と、ご自宅で毎日行っていただく歯磨きなどのセルフケアがあり、どちらもとても重要です。

この記事の監修者
医療法人真摯会 カトレア歯科・美容クリニック
院長 辻 和志

2008年 国立九州大学歯学部卒。医学博士。日本口腔外科学会認定医。ICLS講習修了。

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大阪矯正歯科グループ大阪インプラント総合クリニック