矯正歯科

抜歯をしないで矯正できるの?

抜歯をしないで矯正できるの?

カトレア歯科・美容クリニック 歯科医師 辻 和志

矯正治療をするにあたり、できれば歯を抜かずに治療をしたいと望まれる方も多いのではないでしょうか。非抜歯で矯正治療が出来るケースや抜歯矯正と非抜歯矯正の違いについてご説明します。

抜歯しない矯正治療とは?

抜歯しない矯正治療は、従来の抜歯が必要とされる成人向けの矯正治療とは異なり、患者さんの自然な歯を保持しつつ、歯並びや咬み合わせの改善を目指す治療方法です。特に成人になってから矯正治療を検討する人にとっては、歯を動かすためのスペースを作るために上下左右小臼歯を合計4本抜歯する場合が多く、抜歯の回避は大きなメリットとなるでしょう。

なぜなら、抜歯後の回復期間が不要になり、全体の治療期間が短縮されるからです。また、自分の歯をできる限り残せることは、多くの人にとって心理的な安心感にも繋がります。

抜歯しない矯正治療のメリット

抜歯を伴わない矯正治療には、以下のようなメリットがあります。

  1. 顎の健康維持・・抜歯しないことで、顎の骨格を保持し、顔の形状や表情筋の機能に影響を与えにくい。
  2. 自然な歯並びと顔立ちの保持・・抜歯による顔の印象の変化を避け、より自然な見た目を維持することができます。
  3. 治療期間の短縮・・抜歯後の回復を待つ必要がないため、全体の治療期間が短くなります。

抜歯をしない矯正治療が可能なケース

抜歯せずに矯正治療が可能なのは、かなり軽度の不正咬合です。軽度のガタガタ、軽度の出っ歯、軽度の受け口、1本だけ歯列から飛び出ている、1本だけ捻じれて生えている、軽度のすきっ歯などの場合は、抜歯せずに治療が可能なケースが多いです。

歯の重なりや歯の出っ張りが大きい場合は、その歯を引っ込めて歯列にきれいに収めるためには、スペースが必要になります。必要なスペースが僅かで済む場合は、抜歯の必要はありません。

つまり、不正咬合の程度が軽度であれば、殆どの場合、抜歯せずに矯正治療が可能です。

抜歯矯正が必要なケース

抜歯矯正は大人の矯正では良く行われる方法です。歯のガタガタや重なりが大きい場合、出っ歯や受け口の程度が中~重度の場合は、非抜歯矯正ではなく、抜歯矯正を行う必要があります。

抜歯するとどれくらいの隙間が出来るの?

中~重度の不正咬合の場合は、小臼歯と呼ばれる歯を上下左右の4本抜歯します。小臼歯の大きさは7mm~8mm程度ですので、上顎、下顎それぞれに14mm~16mm程度の隙間が生まれます。この隙間を利用して歯を動かし、歯を一列にきれいに並べたり、出っ歯や受け口を下げていきます。

小児矯正を行うと将来抜歯矯正を行うリスクを減らせる

小児矯正の場合は、まだ顎が成長の途中ですので、顎を大きくしたり、上顎や下顎の過成長を抑制したり、逆に成長を促したりするための矯正装置を使用して、子供の顎を適切な大きさに整えることが可能です。

小児矯正で顎骨の大きさを整えておくと、永久歯がきれいに並ぶだけのスペースが確保されますので、大人になってから矯正治療が必要になっても、抜歯せずに治療出来ます。

抜歯しない矯正治療のメリットとデメリット

非抜歯矯正にはメリットとデメリットがあります。出来れば歯を抜かずに矯正治療を受けたいと希望される方も、抜歯が必要になる場合がありますので、担当医とよく話し合って、比較検討したうえで治療方針を決めましょう。

非抜歯矯正のメリット 非抜歯矯正のデメリット
  1. 歯の本数を減らさずに矯正治療が可能
  2. 抜歯による痛みや傷が治るまでの食事のしにくさを避けられる
  3. 抜歯による口腔内の変化や違和感を避けられる
  4. 短期間で美しい歯並びに整えることが出来る
  1. 重度の不正咬合の場合、治療が難しいことがある
  2. 無理に非抜歯で治療した場合、後戻りが起こる可能性がある
  3. 顎の骨と歯のバランスが取れない可能性がある
  4. 長期的に安定した歯列を保てない可能性がある

歯並びを整えるためにはスペースが必要

歯に対して顎の骨全体が小さかったりすると、歯がきれいに並ばず重なったり傾いたりすることが起こります。大人になり顎の骨の成長が止まると、それ以上顎を大きくすることはできません。顎の大きさが歯の大きさに対して小さい場合は、抜歯をして歯をきれいに並べるスペースを確保する必要があります。

抜歯する歯は、前から4番目(第1小臼歯)になることが多いですが、親知らずや他の歯を抜歯してスペースを作ることもあります。基本的には、どこの歯をどのように動かしたいのか、その位置や必要なスペースによっても抜歯か非抜歯か、また抜歯する歯の位置は異なってきます。

患者さんの噛み合わせや顎の状態、奥歯を含めた歯全体の並び方を総合的に判断して治療を進めていきます。

矯正治療でスペースを作る方法

  1. 抜歯してスペースを作る ⇒空いたすき間に歯を移動させながら並べる(抜歯)
  2. 前歯の両端を僅かに削るIPRを行ってスペースを作る ➾歯を削った分だけスペースが出来る(非抜歯)
  3. 歯列の幅を広げる ⇒広がったアーチに歯を並べる(非抜歯)
  4. 奥歯を後方に移動してスペースを作る ⇒少しずつ歯を奥に移動し並べていく(非抜歯)

矯正治療をする目的とは

矯正治療の目的は、「キレイな歯並び」と「健康的な正しい咬み合わせ」になります。キレイな歯並びになれば、口元を気にせず話したり笑ったりできるようになります。歯列矯正を希望される方の中で、一番多い理由が「見た目を綺麗にしたい」です。

矯正治療をすることによって、歯並びが整えば歯の磨き残しが少なくなり、虫歯や歯周病の予防効果にもなります。歯並びや咬み合わせが悪いと身体にも悪影響を与えてしまい、全身的な病気につながることもあります。

そして噛み合わせについてですが、食べ物をしっかりと噛んで擦りつぶすためには上下の歯が正しく噛み合っていることが大切で、これがずれていると噛みにくく、まだ食べ物の塊がある状態で飲み込むことになってしまい、胃腸に負担をかける原因になります。消化器官の健康の為に、正しい噛み合わせは大変重要です。

非抜歯矯正に関するQ&A

矯正治療において、歯を抜かずに治療することは可能ですか?

はい、非抜歯矯正という方法で歯を抜かずに治療することができます。非抜歯矯正は歯を大きく動かす必要のない場合に選択出来ます。

矯正で歯を抜く必要がある場合はどのような場合ですか?

歯に対して顎の骨が小さく、歯がきれいに並ばない場合や重なったり傾いたりする場合には歯を大きく動かさなければならないため、抜歯をして歯を動かすためのスペースを確保する必要があります。

非抜歯矯正でスペースを作る方法は何種類ありますか?

非抜歯矯正でスペースを作る方法は3種類あります。それは、歯列の幅を広げる方法、奥歯を後方に移動してスペースを作る方法、前歯の側面を僅かに削る方法です。

まとめ

ワイヤー矯正

矯正治療をする上で、できるだけ抜歯をしないで、きれいな口元を得られるのであれば抜歯はしたくありません。しかしながら、日本人の場合、顎の奥行きが小さく、すべての歯が顎に収まりきらないために抜歯をするケースが多いと言われています。

無理に非抜歯で矯正治療をしてしまいますと、結果的に口元が前に出てしまっている、咬み合わせが安定しない、歯肉退縮がおこったりしてしまいます。

そうならないためにも、しっかりと精密検査・診断を行いメリット・デメリットも説明してくれる歯科医院を選んでください。

この記事の監修者
医療法人真摯会 カトレア歯科・美容クリニック
院長 辻 和志

2008年 国立九州大学歯学部卒。医学博士。日本口腔外科学会認定医。ICLS講習修了。

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大阪矯正歯科グループ大阪インプラント総合クリニック