歯と口のトラブル

癒合歯が見つかったらどうすればいいの?

癒合歯が見つかったらどうすればいいの?

癒合歯(ゆごうし)は隣の歯とくっついて2本の歯が1本になって生えて来るものをいいます。癒合歯は乳歯に見られることが多く、永久歯への生え変わりの際には注意が必要です。

癒合歯とは?

癒合歯と正常な歯

歯は生えて来る前は顎の骨に埋まっており、歯は歯槽骨の中で歯の元になる歯胚が形成されて、ある一定の年齢になると歯茎の上に顔をのぞかせます。癒合歯は歯が成長する過程でうまく1本1本に分離できず、2本またはそれ以上の歯がくっついた状態で生えて来るものです。

癒合歯は歯の表面のエナメル質と呼ばれる層がくっついているだけでなく、エナメル質の内部の象牙質もくっついて1つになっており、その内部にある神経が繋がっている場合もあります。

実は癒合歯はそれほど珍しいものではなく、子供の乳歯にはよく癒合歯が起こります。乳歯の下顎の前歯に良く現れ、乳歯に約2~5%に癒合歯がみられるという調査結果もあります。

癒合歯の原因は?

癒合歯の原因は詳しくわかっていませんが、歯の元になる歯胚が成長の段階で何かの原因で隣の歯胚と癒合してしまい、一つの歯になって生えてきます。

乳歯の場合は誕生前に既に乳歯の歯胚がくっついた状態になっているため、遺伝によるものとも考えられます。

癒合歯があるとどんな影響がある?

癒合歯があると、虫歯になりやすく、歯並びに影響が出る場合もあります。

1.癒合歯は虫歯、歯肉炎のリスクが高い

癒合歯は2本以上の歯が繋がっているため、歯の境目に汚れがたまりやすく、歯ブラシでの掃除がしにくくなります。そのため歯垢がたまりやすく、虫歯や歯周病になりやすいという問題があります。
特に乳歯はやわらかく虫歯になりやすいので、歯磨きは子供に任せておかずに保護者が仕上げ磨きをていねいに行いましょう。

2.乳歯が癒合歯の場合、その下の永久歯が欠損しているケースがある

癒合歯の下に永久歯がない場合は、いくつかの対処が考えられます。①乳歯を出来るだけ長く持たせる
②前歯が出っ歯やガタガタで将来的に矯正治療が必要になる場合は、癒合歯が抜けて一時的にすきっ歯になりますが、その後矯正治療を行って歯並びをきれいにする。

3.乳歯の癒合歯で生え変わりの永久歯が存在する場合

癒合歯の下から永久歯が生えてきている場合、癒合歯は2本の歯がくっついていますので、下から永久歯が2本生えて来ると、生えるためのスペースが足りなくてガタガタになる場合があります。

その場合は矯正治療が必要になりますが、混合歯列期の1期治療を行うか、それとも永久歯が全て生え揃ってから2期治療を行うかは、担当医と良く話し合って決めましょう。

4.永久歯に癒合歯がある場合

癒合している部分には歯垢が溜まりやすく、歯石も出来やすいため、虫歯や歯周病になるリスクが高くなります。

乳歯の場合は癒合歯があっても基本的にはそのまま何もせずに永久歯への生え変わりを待つ場合が多いのですが、永久歯は一生使う歯のなのでしっかりと虫歯や歯周病の予防をしなければなりません。
そのためには3ヶ月に一度程度、歯科医院でメンテナンス(定期健診)を受けるのが効果的です。定期健診では歯科衛生士が専用の器械を使って、セルフケアでは取れない歯と歯の間や歯周ポケットにたまった歯垢や歯石をきれいに除去します。

癒合歯は治療すべき?

癒合歯が乳歯であれば、治療の必要はありません。子供が4歳~5歳くらいになったら歯茎の中の永久歯の状態を確認するために、歯科健診を受けましょう。

癒合歯は生え変わりの時に抜けるのがやや遅くなる傾向があり、永久歯がスムーズに生えて来るために乳歯を抜歯することもあります。

癒合歯に関するQ&A

癒合歯(ゆごうし)とは何ですか?

癒合歯は、隣接する2本以上の歯が一つになって生える現象を指します。これは、歯の表面のエナメル質だけでなく、内部の象牙質も結合して一つになっている状態で、場合によっては神経が繋がっていることもあります。乳歯に発生することが多く、特に下顎の前歯によく見られます。

癒合歯があるとどのような影響がありますか?

癒合歯があると、虫歯や歯肉炎のリスクが高まります。これは癒合している歯の境目に汚れがたまりやすく、歯ブラシでの清掃が難しいためです。乳歯が癒合している場合、その下の永久歯が欠損しているケースがあることや、永久歯が存在する場合は矯正治療が必要になることもあります。

癒合歯は治療する必要がありますか?

癒合歯が乳歯の場合、基本的には特別な治療は必要ありません。ただし、4歳~5歳頃には永久歯の状態を確認するために歯科健診を受けることをお勧めします。永久歯の癒合歯は一生使う歯なので、虫歯や歯周病の予防と定期健診が重要です。

まとめ

癒合歯は隣接する歯が一体化して生えてくる現象で、主に乳歯に見られます。この状態は虫歯や歯周病のリスクを高め、歯並びに影響を与えることがあります。

乳歯の癒合、通常は特別な治療を必要とせず、永久歯への生え変わりを待ちますが、場合によっては抜歯や矯正治療が必要になることもあります。

癒合歯は歯と歯がくっついている部分が虫歯になりやすいので、乳歯、永久歯に関わらず、丁寧に歯磨きをして歯垢をためないことが重要です。

癒合歯(ankylosed teeth)の管理についての研究から以下のような治療方法が示されています。

1. 分割骨切り術と矯正治療
癒合歯は、通常の矯正治療だけでのアライメントが難しい場合があります。この症例報告では、55歳の女性が衝撃と癒合により影響を受けた上顎左側の犬歯で、分割骨切り術と直ちに犬歯の再配置を行い、最終的な矯正治療後に満足のいく咬合と審美的な治療結果を得たことが報告されています。【H. Aludden & T. Jensen, 2016

2. コルチコトミーによる矯正治療
癒合歯は成長期の患者において特別な治療を必要とし、長期的な審美的および機能的な結果を達成するためには、抜歯後の再建、外科的な抜歯、個別のセグメントオステオトミーまたはコルチコトミー、および骨延長術が提案されています。この報告では、前歯開咬のある13歳の男子患者の癒合した上顎中央切歯をコルチコトミーを用いた矯正治療により管理した症例が紹介されています。【Dong-Hyun Hwang et al., 2011

これらの研究結果から、癒合歯の管理には、分割骨切り術やコルチコトミーを含む外科的なアプローチと矯正治療の組み合わせが有効であることが示されています。癒合歯の治療には、患者の個々の症状や状態に応じた個別化された治療計画が必要です。

この記事の監修者
医療法人真摯会 カトレア歯科・美容クリニック
院長 辻 和志

2008年 国立九州大学歯学部卒。医学博士。日本口腔外科学会認定医。ICLS講習修了。

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カトレア歯科・美容クリニック

大阪矯正歯科グループ大阪インプラント総合クリニック