酸蝕歯(さんしょくし)は、歯周病、虫歯の次に多い歯科疾患といわれます。歯に酸蝕歯の兆候が見られたら、対策をしないとエナメル質や象牙質が溶けてしまいます。酸蝕歯についてご説明します。
酸蝕歯とは?
歯は硬いエナメル質に覆われていますが、酸蝕歯になると、歯のエナメル質がやわらかくなって溶けやすくなります。その原因の多くは食品に含まれる酸であるといわれますが、逆流性食道炎などの胃酸の逆流によっても起こります。過食嘔吐の場合も胃酸で歯が溶けやすくなります。
酸蝕歯でエナメル質や象牙質が溶けてしまうと、もう元に戻りません。そのため、歯がかなり溶けてしまう前に酸から歯を守ってエナメル質が溶け出さないようにする必要があります。
酸蝕歯の初期症状は自分でわかりにくいため、歯の定期健診を受けて早期発見につとめましょう。
酸蝕歯の症状
酸蝕歯の症状は、歯がどの程度溶けてしまったかにもよりますが、虫歯の症状に似ています。一例をご紹介します。
- 冷たい物や熱い物がしみる
- 歯が一部透けて見える
- 歯の角が溶けて丸くなっている
- 歯の表面に艶がない
- 歯の表面に小さなへこみがある
酸蝕歯を起こしやすい食品は?
酸性の強い飲食物に歯がさらされると、酸蝕歯の原因になります。歯の表面のエナメル質は人体の中で一番硬いのですが、pH5.5以下の酸性度の高い状態になると、溶けやすくなってしまいます。
その他の酸性度の高い食品の代表的なものは、かんきつ類、酢、炭酸飲料などです。これらの食品を頻繁に飲食する方は酸蝕歯のリスクが高く、注意が必要です。
ペーハー(pH)とは?
pH(英語でピーエイチ、ドイツ語でペーハー)は溶液中の「水素イオン」の濃度のことをいいます。濃度が濃い溶液の液性を「酸性」、薄いと「アルカリ性」と呼びます。濃度を数字で表現しますから、酸性・アルカリ性の強さが数字でわかります。
一般的に、酸性が 強い ときは アルカリ性が 弱い
酸性が 弱い ときは アルカリ性が 強い ということになります。
酸蝕歯の原因となる病気はあるの?
酸蝕歯は歯が酸にさらされることで発症します。お口の中が酸性になる病気としては、胃食道逆流症などの胃や食道の病気があげられます。
その他に、食べ過ぎ飲み過ぎによる胃酸の逆流が起こると、お口の中が酸性に傾き、酸蝕歯の原因となります。
酸蝕歯の治療方法とは?
酸蝕歯(エナメル質溶解症)は、食事や飲み物、胃酸の逆流などによって歯のエナメル質が徐々に溶けて失われる状態のことをいいます。これにより、知覚過敏になったり、歯が溶けて形が変わったり、虫歯になるリスクも高まります。治療方法には以下のようなものがあります。
1. 歯科治療
酸蝕歯が進行してエナメル質が大きく損傷している場合は、コンポジットレジンを用いて歯を修復する充填治療、歯のクラウンやベニアなどで歯を保護することもあります。
2. ライフスタイルを変える
- 酸性の飲食物の摂取を控え、食後に水で口をすすぐことで、酸の歯への影響を減らすことができます。
- 胃酸の逆流が原因の場合は、その治療が必要になります。過食嘔吐も同様です。
- 食後すぐはエナメル質が軟化しているため、食後すぐに歯を磨くのではなく、30分から1時間待ってから磨くことで、エナメル質の損傷を防ぎます。
3. フッ化物の使用
フッ化物配合の歯磨き粉やフッ化物配合のデンタルリンスを使用することで、エナメル質を強化し、酸による損傷を抑制することができます。
4. 再石灰化
カルシウムやリン酸塩を含む特定の製品を使用して、初期の酸蝕歯に対してエナメル質の再石灰化を促進させる治療を行うことがあります。
5. 口腔内を保護するマウスピースの使用
夜間の歯ぎしりやくいしばりがエナメル質の損傷の原因となっている場合は、マウスピースの使用が推奨されることがあります。
重要なのは、酸蝕歯の原因を特定し、その原因に対する適切な治療やライフスタイルの変更を行うことです。また、定期的な歯科健診で酸蝕歯等の歯のトラブルを早期発見し、適切なアドバイスや治療を受けることが重要です。
酸蝕歯の予防はどうすればいいの?
酸蝕歯を予防するには、歯を酸に晒さない注意が必要です。
- 炭酸飲料などの酸性度の高い飲料を飲む回数を減らす
- 柑橘類や酢の物などの酸性度の高い食品を食べる回数を減らす
- 酸性度の高いものを飲食したら水でうがいをする
酸で歯が溶ける酸蝕歯に関するQ&A
酸蝕歯とは、歯のエナメル質が酸によって溶けてしまう状態のことです。
酸蝕歯の主な原因は、食品に含まれる酸や胃酸の逆流(逆流性食道炎)です。
酸蝕歯の治療方法は、歯に穴が空いたり欠けたりしている場合は歯を削って形を整え、詰め物や被せ物の処置が必要になります。エナメル質が薄くなっている段階では、フッ素入りの歯磨き剤を使用して歯を強化することもあります。
まとめ
酸蝕歯が進んでいくと、歯が溶けて見た目が悪くなる、噛み合わせが悪くなるなどの症状が出てきます。エナメル質が溶けた部分は虫歯になりやすい為、虫歯への対策も必要になります。酸蝕歯になっているかどうかは、歯の定期健診でわかりますので、数か月に一度の定期健診をお受け下さい。
酸蝕歯(歯が酸によって溶ける症状)に関する論文を2件紹介します。
1. 歯のエロージョン(酸蝕歯)の病因と修正因子
Meurmanとten Cate(1996)の研究では、歯のエロージョンが歯に接触する酸性溶液によって引き起こされることが説明されています。歯のエナメルの臨界pHは約5.5であるため、このpH値より低い任意の溶液は、特に長期間かつ繰り返し攻撃がある場合にエロージョンを引き起こす可能性があります。唾液と唾液ペリクルは酸の攻撃に対抗するが、挑戦が深刻である場合、歯組織の完全な破壊が続きます。この研究は、歯のエロージョンの病因と、症状の進行を遅らせるための可能な予防策についての洞察を提供します。【Meurman & ten Cate, 1996】
2. 歯のエロージョンの病因と予防
Bartlett(2009)の研究では、酸エロージョンが食品や胃酸のような外部および内部の酸源によって引き起こされる化学的作用として説明されています。歯のエロージョンは、低pHで発生しますが、固定された臨界pH値はありません。歯のエロージョンは、子供と大人の歯の長期的な健康管理において重要であり、早期診断と適切な予防措置が必要です。これには、全般的な健康評価、食事調査と助言、および局所的なフッ化物剤の使用が含まれます。【Bartlett, 2009】
これらの研究から、酸蝕歯は外部または内部の酸源によって引き起こされるものであり、予防としては酸性食品や飲料の摂取を制限し、適切な口腔衛生を維持することが重要であることがわかります。