矯正で歯が動くのはなぜ?仕組みをわかりやすく解説!

歯列矯正は歯を移動させて歯並びを整える治療ですが、あんなに硬い歯がどうして動くの?と疑問に感じる方も多いでしょう。歯は顎の骨に支えられているため、簡単には動かせないように思えますが、実際には、歯と骨の間には歯根膜、周囲には歯槽骨といった組織があり、これらが働くことで少しずつ歯が移動していきます。この記事では、歯列矯正で歯が動くメカニズムと、その裏側で起こっている体の反応について、わかりやすく具体的に解説します。

矯正治療で歯が動くって本当?

歯は骨にしっかり埋まっているのに、矯正装置を付けて動くのかという疑問は、矯正治療を検討し始めた多くの方がもたれるものです。結論から言いますが、矯正治療によって歯はしっかり動きます。偶然や力任せではありません。

矯正治療は無理やり力をかけて行っているわけではなく、人間の体が本来持っている仕組みを利用した医学的に確立された方法です。仕組みを理解すると、矯正治療への不安もぐっと減るはずです。

歯は骨に埋まっているのになぜ動くのか

歯は顎の骨である歯槽骨に直接くっついているように見えますが、実は歯と骨の間にクッションのような組織が存在します。それが歯根膜しこんまくです。歯根膜の重要な役割をご紹介します。

  • 歯と骨をつなぐ
  • 噛んだときの衝撃を和らげる
  • 歯にかかる力を感知する

歯根膜があるおかげで、歯はわずかに動く余地を持っています。つまり、歯は骨に完全に固定されているわけではないという点が、矯正で歯が動く最大のポイントになります。

ポイントは歯根膜と骨の新陳代謝

矯正で歯が動く仕組みを理解するうえで、欠かせないキーワードが2つあります。

歯根膜
骨の新陳代謝(リモデリング)

矯正装置によって歯に力が加わると、歯根膜が圧迫される側と引っ張られる側に分かれます。歯根膜に隣接する骨では、圧迫されている側は骨が吸収され、引っ張られている側は新しい骨が作られるという変化が起こります。この骨が壊れて作り直されるというサイクルが、矯正で歯が動くメカニズムの本質です。歯そのものが移動しているのではなく、歯を支える骨の形が少しずつ変わっているのです。

骨のリモデリングを詳しく知る

細胞の名前 主な役割 具体的な働き
破骨細胞はこつさいぼう 古い骨を壊す 骨の表面に付着し、骨を溶かして分解する。最初に破骨細胞が働く
骨芽細胞こつがさいぼう 新しい骨を作る たんぱく質や、カルシウム、リンなどを分泌し、骨を作る。破骨細胞の活動が終わってから働く

骨のリモデリングは、破骨細胞と骨芽細胞の2種類の細胞が連携して進めます。
破骨細胞が骨吸収をする
骨芽細胞が骨形成をする

この2つの働きがバランスよく繰り返されることで、骨は常に入れ替わり、強度が適切に維持されます。破骨細胞と骨芽細胞の協働によって骨は生まれ変わり続けているのです。

矯正装置が歯に与える力の正体

矯正治療においては、このような治療法や器具が使われます。

ワイヤー矯正

  • 歯の表面にブラケットという突起を付着し、その中にワイヤーを通して歯に矯正力をかける
  • 様々な不正咬合や噛み合わせの悪さを改善でき、表側、ホワイトワイヤー、裏側など付ける部分は選べる

マウスピース矯正

  • 自身で取り外しができる透明なマウスピースを装着し、一定期間をおいて交換をして矯正力をかける
  • 食事制限がなく、マウスピース矯正としてはインビザラインが有名である

部分矯正

  • 歯の数本のみに装置を付けて動かす治療法
  • 前歯のみ治したいという方に向いている

これらの装置に共通しているのは、弱く持続的な力を歯にかけるという点です。

強すぎる力をかけるとどうなる?

強く力をかけたら歯が早く動くならばそれがいいという方もおられるかもしれません。強すぎる力をかけるとどのような影響を与えるか、挙げていきます。

歯根膜がダメージを受ける

歯根膜のダメージとは、どのようなものか、具体例を挙げましょう。

炎症・痛みの発生

歯根膜が刺激を受けて歯根膜炎を起こし、噛むと痛む、歯が浮いたように感じるなどの違和感が出やすくなります。

血流の低下と組織ダメージ

強い圧迫が続くと血流が妨げられ、その部分の細胞が弱ってしまったり、組織の壊死が生じることがあります。

組織の損傷・断裂

歯根膜の線維が裂けたり、血管が傷ついて出血を伴うなど、組織そのものが物理的に傷む場合があります。

骨吸収の進行

慢性的に過大な力がかかっていると、歯を支える骨の吸収を促し、骨が減りやすい状態をつくります。

歯の動揺

線維の破壊や骨量の低下が重なることで、歯がぐらつき、揺れ始め、安定性が落ちていきます。

骨の代謝が追いつかない

骨の代謝の基本的な流れと期間をご紹介します。骨代謝は大きく3段階で進みます。

期間名 主に働く細胞 起こっていること 期間の目安
骨吸収期 破骨細胞 古い骨を溶かして取り除く 約2~4週間
逆転期 (移行期間) 骨吸収から骨形成へ切り替わる準備 約1~2週間
骨形成期 骨芽細胞 新しい骨を作り、骨の強度を回復させる 約2~4か月

1回の骨のリモデリングが完了するまでに、約3~6か月かかります。成長期の子供であれば非常に活発で、成人であればゆっくりなどの年齢差はあります。

痛みやトラブルが増える

歯根膜が強く圧迫されたり、血流が悪くなり組織がダメージを受けると、骨の代謝が止まってしまい、歯がスムーズに動かなくなります。ズキズキした痛みや噛めない痛み、歯が浮く感じが強く症状として現れます。

矯正は強い力をかけると、早く動くのではなく、弱く持続的な力をかけると、痛みが少なくきちんと動くということです。そのため、矯正では、すぐ動かすのではなく、体が自然に反応できる範囲の力をコントロールしながら歯を動かしていきます。

歯が動くときに体の中で起きていること

矯正で歯が動く間、体の中では次のような変化が連続的に起こっています。

  1. 矯正装置から力が加わる
  2. 歯根膜が刺激を受ける
  3. 破骨細胞が働く
  4. 骨芽細胞が働く
  5. 歯が新しい位置で安定する

この流れを何度も繰り返すことで、少しずつ理想的な歯並びへと近づいていきます。矯正で歯が動くという現象は、体の治癒反応そのものとも言えるでしょう。

歯が動くスピードと個人差の理由

矯正治療では、歯が動くスピードが、思ったより早く動く人とゆっくりな人がいます。その理由を挙げていきましょう。

年齢
若いほど骨代謝が活発
骨の硬さや質
骨が硬く、咬合力が強い方は骨のリモデリングがゆっくり
歯並びの状態
歯並びがガタガタであれば骨のリモデリングはゆっくり
生活習慣
睡眠や栄養をきちんと摂取しているか
装置の使用状況
マウスピース矯正の場合一日20~22時間装着できなければ、歯の動くスピードが大きく落ちるため、担当医の指示通りに装置を使えているか

痛みが出るのはなぜ?

矯正を始めた直後や、装置を調整した後に痛みを感じることがあります。これは、歯が動き始めているサインでもあります。

痛みの主な原因は、歯根膜が圧迫され、骨の代謝が活発になり、神経が刺激されるといった反応です。2~3日が痛みのピークとなり1週間ほどで落ち着く方が多いですが、強い痛みがそれ以上続く場合は、我慢せず歯科医院へ相談しましょう。

矯正で歯が動くために大切な生活習慣

矯正治療の効果を高めるためには、日常生活の習慣も大切です。特に意識したいポイントについてご説明します。

カルシウムやタンパク質が豊富なバランスの良い食事
十分な睡眠
ていねいな歯磨きと口腔ケア
指示された装置の使用時間を守る

骨の新陳代謝を正常に保つために必要な生活習慣です。これらが整うことで、矯正の歯が動くスピードも安定します。

矯正で歯が動かない・遅いと感じる場合

矯正しているのに歯が動かない気がすると感じる方は、次のポイントをチェックしてみましょう。

  • 装置の使用時間が足りているか
  • 定期通院を守れているか
  • 強い歯ぎしりや食いしばりがないか
  • 歯周病などのトラブルがないか

矯正は目に見えない変化の積み重ねです。数週間単位では分かりにくくても、数ヶ月で確実に変化が現れます。

まとめ


矯正で歯が動くのは、歯根膜の存在、骨の新陳代謝、弱く持続的な矯正力をかけることによるものです。矯正治療は時間がかかりますが、その分、体に無理のない安全な方法です。理解することで、矯正治療への不安が減り、痛みも納得でき、治療へのモチベーションにもつながるものです。疑問や不安があれば、遠慮せず歯科医院に相談しながら進めていきましょう。