輪郭整形

しゃくれと受け口の違いとは

しゃくれと受け口の違いとは

しゃくれや受け口と聞いて違いがあるのか、日常会話で耳にする機会はあれど、本質的には別の定義です。古代の王朝の名門であるハプスブルク家では、下の顎が上の顎より前に出た肖像画が残っています。昔から存在していたしゃくれや受け口について詳しくご紹介いたしましょう。

しゃくれと受け口の簡単な定義

しゃくれと受け口の見た目や定義について簡単にご説明します。

しゃくれの定義

一般的にしゃくれと呼ばれる状態は、下顎(あご先)が前方に突き出しているように見える顔貌を指します。見た目の問題として医学的に異常とされることは必ずしもありませんが、下記のような悩みがつきまといやすくなります。

  • 写真や笑顔で外見にコンプレックスが生まれる
  • 発音しづらく滑舌が悪い
  • 噛み合わせがずれ食事に影響する
  • 顎関節に負担がかかる
  • 正面から見ると下顎が長く見える
  • 横顔で顎先が強調されて見える
  • 無意識のうちに下顎を前に突き出しているように見える

しゃくれ感は骨格そのものの形状が原因で、筋肉のバランス、姿勢、歯並びが影響しているケースもあります。

受け口の定義

受け口は噛み合わせ(咬合)の異常を指す医学用語で、正式には反対咬合や下顎前突と呼ばれます。

  • 上の歯よりも下の歯が前に出て噛み合っている
  • 一部の発音がしづらい
  • 食事がしづらくよく噛めない
  • 口元が閉じにくい
  • 横から見て顎が出ているように感じる
  • 唇を閉じにくく表情が硬く見える

しゃくれと受け口の関係

しゃくれは顔貌などの見た目の問題、受け口は機能の問題と分けて考えることもできます。症状が同時に現れるケースが多いこともありますが、必ずしもしゃくれと受け口はイコールではありません。歯の並び方や骨のバランス、筋肉の使い方など複合的に絡んでいるため、素人目には顎が出てる位ででも、実は違うということがあります。顎の骨格や歯列の噛み合わせ、舌の癖や呼吸の癖などを総合的に分析するには、矯正歯科医や口腔外科医の診断が欠かせません。

しゃくれは手術、受け口は矯正という単純な話ではありません。違いを正しく理解して自分の状態を知ることが、最短で最良の解決につながる第一歩です。

しゃくれの医学的定義

一般的に下顎が長く前に突き出しているように見える状態を指します。俗語的な表現であり、本人にとっては見た目へのコンプレックスになりやすく、心理的な影響も無視できない状態です。しゃくれは医学的には下顎前突と診断され、下顎骨(あごの骨)が上顎よりも前方に成長しすぎた状態です。では、このしゃくれ顔とは具体的にどんな特徴があり、何が原因でしょうか。

しゃくれの要因

両親または祖父母に同様の骨格の方がいたり、骨の成長スピードやバランスが偏っていると起こります。後天的要因としては幼少期に舌で下の歯を押す癖があったり、口呼吸の習慣があったり、歯並びの乱れや噛み合わせのズレを放置すると骨格に影響を与えます。小さい頃の生活習慣が骨格形成に与える影響があるため、しゃくれについては、思春期前の早期発見が大切です。

正面と横顔の違い

正面では顎先が突出して下半分の顔が長く、下唇が上唇よりも前に出て見え、口が閉じづらく口元が常に開いている印象です。横顔では、鼻の先と顎先を結んだEラインより顎が出ていて、頬がこけたように見え、全体の顔のバランスが崩れやすいです。

しゃくれと受け口での注意

骨格が原因であるしゃくれについては、全員が反対咬合になっているとは限りません。ただし、骨そのものの成長異常である骨格性下顎前突、歯列のズレによる見た目の変化である歯槽性下顎前突が考えられます。骨格性なら外科的処置が必要になり、歯並びのみの歯槽性なら矯正治療のみで解消できるケースもあります。

受け口の医学的定義

受け口は、医学的に反対咬合と呼ばれ、噛み合わせの異常を表す用語で、上の歯よりも下の歯が前に出てしまっている状態です。審美面に影響のあるしゃくれと違い、機能面でのトラブルが顕著に表れ、奥歯の咬合ができないため噛めず、一部の発音が不明瞭になりがちです。顎関節に負担がかかりやすくなるため、耳の手前の頬のあたりからカクカク音が鳴るなどのトラブルが起きます。笑顔が不自然になることへのストレスや、会話に自信が持てないことがコンプレックスになることもあります。

受け口の主な要因

反対咬合には、遺伝と生活習慣の両方が原因として複雑に絡み合っています。両親や祖父母に反対咬合の方がいたり、上顎の発達がうまくいかず相対的に下顎が前に成長して見えたり、反対に下顎が過成長する骨格が遺伝的原因です。後天的な原因の場合として、指しゃぶりや、舌を前に押す癖(舌突出癖)を行っていたり、口呼吸やアレルギー性鼻炎によるぽかん口の習慣があり、離乳期の咀嚼トレーニング不足であったり、乳歯の虫歯放置による上下の歯のズレが原因です。

受け口の治療

大人であるか、子供であるかによって受け口の治療は大きく違います。

子供の反対咬合治療

子どもの受け口は早期発見と治療が肝心で、早めに矯正治療を行えば外科手術を避けられる可能性が高いです。乳歯期や混合歯列期の治療方法として、上顎の成長を促す拡大装置を装着したり、舌の位置を改善するトレーニング(MFT)、舌癖や口呼吸の改善を目的とした生活指導を行います。乳歯時代の受け口は成長とともに改善することがありますが、骨格性の反対咬合は自然には治りません。

大人の反対咬合治療

大人になってからの反対咬合治療は、矯正のみでは限界があるケースがあります。

  • 軽度であればワイヤー矯正やマウスピース矯正(インビザラインなど)
  • 中~重度であれば顎の骨を動かす手術を行う外科的矯正と歯列矯正の併用
  • 審美目的であればセラミックの被せ物で前歯の傾斜を変えるセラミック治療

見た目の歯のみを治したいといじると、かえって噛み合わせが悪化することもあるので、必ず歯科医師に診断を仰ぎましょう。

放置したらどうなる?

しゃくれや受け口と聞くと、まず気になるのは見た目でしょうが、実際には見た目以上に深刻な機能面の悪影響が隠れていることもあります。顎のずれは全身のトラブルになることから、放置しないようにしましょう。

咀嚼機能の低下

しゃくれや受け口で噛み合わせに問題がある場合、効率的に食べ物をすり潰すことができません。食べにくければよく噛まずに飲み込んだり、反対に噛めず口の中で咀嚼し続け、食事の時間が長くなることが考えられます。すりつぶせなければ消化器官への悪影響を及ぼし、胃腸への負担が増えます。偏った咀嚼が癖になっていると、顔の左右差が生じ、顎関節に負担が集中するため、顎関節症の引き金になることもあります。

発音障害・会話のしづらさ

受け口は特に舌の動きが制限されるため、発音が不明瞭になりやすいです。

  • サ行 → 舌の先が前歯にうまく当たらず、たどたどしい印象になる
  • タ行 → 空気の抜け方が悪くこもって聞こえる
  • カ行・ハ行 → 顎の動きが悪く息の調整がしづらい

発音のクセは周囲からの指摘で初めて気づくことが多いです。言いづらく聞き返される状態が続くと、会話に対する自信を喪失しやすくなります。

顎関節への慢性的なストレス

しゃくれや受け口は、下顎が本来の位置より前に出ているため、関節に常にずれた圧力がかかり続けた状態です。その結果、顎の痛みやカクカク音、口の開閉のしづらさが生じ、頭痛、首の痛み、肩こりにつながる場合もあります。顎関節症が慢性化すると食事や会話に支障が出てきます。見た目以上に日常生活へ影を落とすことから、放置すれば悪化するため、早期の診断と対応がカギです。

心理的ストレス

外見的なコンプレックスに加えて、噛めなかったり話しづらいとなると、心理的な負担は倍増します。見た目と機能のダブルパンチになります。

  • 写真を撮るのが苦手になる
  • 人前で話すことに抵抗感が出て会話を積極的に行わない
  • 笑顔が固くなり、対人関係に消極的になる

人と話したくないため、仕事や恋愛に影響し自己肯定感の低下という悪循環に陥る方も少なくありません。

しゃくれも受け口も改善できる?

しゃくれも受け口も仕方ないと思い込みがちですが、現代の歯科や顎顔面治療では改善が可能です。それぞれの状態に合わせた治療法を検討しましょう。

矯正治療

  • ブラケットという突起を歯に付け、その中にワイヤーを通し矯正力をかけるワイヤー矯正
  • 半透明で見えにくいインビザラインというマウスピースを交換しながら矯正力をかけるマウスピース矯正
  • 気になる部分の歯のみに装着する部分矯正

歯に原因があり、歯並びや噛み合わせを改善すれば治る場合、第一選択となるのは歯列矯正です。歯の傾きにより相対的に受け口のように見える方や、骨格に問題ないが歯列が乱れている方、軽度のしゃくれ感があるが機能に支障は少ない方が該当します。治療期間や費用、審美性や装着時間など、メリット・デメリットを総合的に検討しましょう。混合歯列期で顎がまだ発達途中の成長期の子どもなら、骨の発育をコントロールしつつ改善できる可能性が高くなります。

外科手術

下顎が前に出すぎていたり、もしくは上顎の発育が不十分な場合は、外科的なアプローチを行います。骨格に問題があるならば、下顎を後退させるセットバック手術が有効です。上下の顎のバランスを整えることで、機能と審美性を同時に改善することができます。骨格性下顎前突、骨格性反対咬合では、噛み合わせ以外に顔全体のバランスに違和感がある場合です。

日本では顎変形症と診断されれば美容目的ではなく機能回復のための治療と考えられ、保険適用になる場合もあります。

セラミック矯正

どうしても外科的治療や長期の歯列矯正に踏み切れない人へは、短期間で見た目を整える選択肢としてセラミック矯正が挙げられます。ご自身の歯を削り、セラミックの被せ物(クラウン)で前歯の傾きを整え美しくします。治療期間が圧倒的に短いというのがメリットですが、原因の解決にはならないことや、噛み合わせの問題を無視して処置すれば悪化する可能性があります。審美治療は症状の軽い人向けであることが前提であり、適応範囲を超えた中度以上の方が行うとは、お口の機能審美性の問題を大きくするリスクがあります。

どの治療でも共通する大事なこと

どの治療を行うにしても、正確な診断がすべての出発点です。矯正歯科、口腔外科、顎関節の専門家などの複数の分野の知見が必要になることがあります。治療期間、費用、見た目の変化、通院頻度などを含めて相談し、見た目の改善と機能の回復ができる自分の希望やライフスタイルに合った治療を行いましょう。

まとめ


しゃくれや受け口は放置せず、今の選択肢を知りましょう。昔は治らなかったが今は治ることが多く、見た目は気にならないけど噛めなかったり話しづらい状態は放置厳禁です。手術のみではなく、矯正で改善可能ということもあります。状態を診断してもらい、きちんと考えることが正解です。

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